血塗られた慈悲、笞打つ帝国。
江戸から明治へ、刑罰はいかに権力を変えたのか?

ダニエル・V・ボツマン著
小林朋則◎訳 416頁/定価3000円+税
 ISBN 978-4-7726-9517-6
発行 インターシフト 発売 合同出版

ついに明かされた、江戸・明治の社会の深層構造。
不朽の名著、M・フーコー『監獄の誕生』の日本版といえる金字塔!

・江戸時代、なぜ残虐な刑罰が日常茶飯事だったのか?
・江戸幕府は「慈悲深い」権力者というイメージ戦略を、いかに成功させたか?
・ペリー来航の重要な任務は、「治外法権」を認めさせることだった。
・明治政府は、なぜ、旧来の刑罰改革を急務の課題としたのか?
・植民地・台湾に、帝国日本が驚くほど壮麗な監獄を作ったのは?
・日本の資本主義の台頭を、囚人労働がいかに支えたか?

 ーー江戸から明治へ、刑罰がいかに社会秩序の基盤となり、
   権力を形成・変革してきたのかを、解き明かした画期的論考!

 ーー『カムイ伝』から『蟹工船』まで、その背景が浮かび上がる!
 

【田中優子、小熊英二さんも絶賛推薦!】
★刑罰を通して日本の権力構造の歴史を、きわめて鮮明に指摘した、驚くべき本だ。
 裁判員制度の始まった今こそ必要な歴史観が、ここにある。
 ーー田中優子(江戸学)
★「人類が築く社会が、歴史の虜であり続ける必要も義務もないこと」を実証するのが
 歴史研究の意義だと著者はいう。本書で、著者はその志を達成したと思う。
 ーー小熊英二(歴史社会学)

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●ダニエル・V・ボツマン  Daniel V.Botsman  
ハーヴァード大学・歴史学部の准教授を経て、現ノースカロライナ大学チャペルヒル校・准教授。オーストラリア国立大学アジア研究学部卒。英オックスフォード大学大学院および米プリンストン大学大学院で日本近代史を研究。プリンストン大学で奨学金を得て、調査研究のため来日する。日本滞在中は、北海道大学法学部で教鞭も執りつつ、本書の執筆を進める。

●小林朋則(訳者)
翻訳家。主な訳書に『近代日本の誕生』『非暴力』『先史時代と心の進化』(以上、ランダムハウス講談社)、『ヴィジュアル版 世界の特殊部隊』『D‐Day 史上最大の作戦の記録』『戦場の狙撃手』(以上、原書房)など。

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 ::目次::  

  序章 江戸から明治へ、刑罰・近代化・帝国の支配 
               
 第1章 秩序の象徴:将軍のお膝元での刑罰と権力 
  江戸の刑罰は、残虐で遅れていたのか?・・処刑現場を公開しない統治術・・
  刑罰の地理学:江戸は刑罰を象徴する印に満ちあふれていた・・親子のような「御仕置」関係
  ・・ほか

 第2章 血塗られた慈悲:幕府のふたつの顔と被差別民
  畏怖される仁君・・融通、手加減、恩赦・・被差別民が守った武士のイメージ

 第3章 身分の力:牢屋敷に投影された江戸時代の社会構造
  「容器社会」の組織化戦略・・小伝馬町牢屋敷:身分制の原理が剥き出しになる場所・・
  なぜ武士に厳罰が科せられたのか?・・二重権力ではない複雑な政体・・ほか

 第4章 混乱と救済:人足寄場の歴史的意義  
  混乱の影:荻生徂徠と太宰春台の改革・・永牢:社会の周縁に追いやられた者たちの救済
  ・・増え続ける浮浪者問題をどう解決するか?・・寛政の改革と暴徒対策・・
  人足寄場はプロレタリアを形成したのか?・・ほか

 第5章 文明の証しとしての刑罰 : 幕末における治外法権と改革の波
  「国民」の形成、刑罰の抜本的転換へ・・魅力的な夢物語:理想化された欧米の獄制・・
  欧米列強が恐れた「東洋の野蛮」

 第6章 規律社会へ :日本における監獄の誕生
  王政復古と旧刑罰制度の解体・・小原重哉の植民地視察とパノプティコンの理念・・
  一目洞視と「平民」の誕生・・日本初の近代的監獄、そして江藤新平の晒し首

 第7章 国家・資本・監獄 :文明開化の深層構造
 
 国内外の力が絡み合う刑罰改革・・拷問と晒し首の廃止、ボアソナードによる近代的刑法の起草
  へ・・政治問題の解決道具としての監獄・・資本主義の興隆を支えた囚人労働・・ほか

 終章 植民地帝国と刑罰:最新の監獄に野蛮な刑罰
  一八九五年という転換点・・知の生産場所:植民地台湾における監獄の役割・・
  笞打たれる台湾・・文明化する力は、どこから来たのか?・・ほか

 参考文献・原注                   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

絶賛の声!

刑罰を通して日本の権力構造の歴史を、きわめて鮮明に指摘した、驚くべき本だ。
裁判員制度の始まった今こそ必要な歴史観が、ここにある。
ーー田中優子(江戸学)

「人類が築く社会が、歴史の虜であり続ける必要も義務もないこと」を実証するのが
歴史研究の意義だと著者はいう。本書で、著者はその志を達成したと思う。
ーー小熊英二(歴史社会学)


江戸時代は厳罰主義だったがそこに「仁政」「慈悲」の顔を仕掛けた。
明治の日本は「文明」の顔を持った。現代について深く考えさせられる書だ。
ーー『毎日新聞』日曜書評欄より


近世と近代の刑罰制度の変遷を、大きく見渡して明快・精緻に論理化した、
みごとな労作である。
ーー安丸良夫(一橋大学名誉教授)〜『徳島新聞』書評より

本書は江戸と明治の歴史を冷静にふりかえる一助になるに違いない。
ーー氏家幹人(歴史学者)〜『日本経済新聞』書評より


刑罰制度の系譜を辿るなかから、欧米の帝国主義との交流/交渉を通じて成立した、
近代日本を問おうとする意欲に満ちた「日本学」が目指されている。
ーー川村邦光〜『週刊 読書人』書評より

江戸時代から明治時代にかけての、刑罰の変遷についての興味深い研究書だ。
ーー佐藤優〜『文藝春秋』書評より

「刑罰」とは何かを再考する契機としての歴史観がここにある。
ーー『法学セミナー』新刊ガイド

とりわけ江戸時代について、むやみに残虐であったわけではなく、
身分制を基礎にし、慈悲と組み合わせた見事なひとつの秩序であったことを指摘して説得力がある。
また植民地化の犠牲者と加害者の両面を持つ日本の微妙な状況も描いている。
西洋中心主義を完全に排した視点が心地よい。
ーー河合幹雄(桐蔭横浜大教授・法社会学)〜北海道新聞より


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